生命の謎を物理の法則で解き明かすのが生物物理学です。細胞の動きからタンパク質の形まで、目に見えない微观の世界を数式や実験で可視化し、生きている現象そのものを理解しようとする分野です。

Gist.Science は、この分野の最新研究成果を bioRxiv から収集し、すべてを網羅的に処理しています。専門用語の壁を越えるため、各論文の平易な要約と、技術的な詳細なまとめの両方を提供し、誰でも最新の知見に触れられるようにしています。

以下に、bioRxiv から新たに公開された生物物理学の論文一覧を掲載します。最新の発見をぜひご確認ください。

An essential dynamics-based elastic network model to unravel the conformational dynamics of DNA, RNA, and protein-nucleic acid complexes

本論文では、DNA、RNA、およびタンパク質 - 核酸複合体の機能運動を解明するため、分子動力学シミュレーションに基づいてパラメータ化され、NMR 実験データと整合する新しい「edENM」と呼ばれる必須動力学に基づく弾性ネットワークモデルを開発し、これを大規模なコンフォメーション遷移のシミュレーションを可能にする eBDIMS 枠組みに統合したことを報告しています。

Cannariato, M., Scaramozzino, D., Lee, B. H., Deriu, M. A., Orellana, L.2026-03-13⚛️ biophysics

Segment Any Plant (SAP): Foundation-Model Segmentation for Plant Time-Series Phenotyping

本論文は、事前学習済みモデル SAM2 を活用し、少量のインタラクティブな指示のみで多様な植物種や成長段階にわたる時系列画像の自動セグメンテーションと定量的な形質解析を可能にするフレームワーク「SAP」を提案し、従来の手法が抱えていたデータ集約性と汎用性の課題を解決したことを示しています。

Abbey, A., Meroz, Y.2026-03-13⚛️ biophysics

Enhancer binding kinetics explain transcription factor hub formation

この論文は、Drosophila 胚における転写因子のクラスター(ハブ)形成が、エンハンサー配列にコードされた転写因子と DNA の結合速度論によって生じる現象であり、必ずしも転写バーストを予測するものではないことを、ライブイメージングと計算モデルを用いて実証したものである。

Fallacaro, S., Kapoor, M., Encarnation, L., Mukherjee, A., Turner, M. A., Garcia, H. G., Mir, M.2026-03-12⚛️ biophysics

A mathematical model of curvature controlled tissue growth incorporating mechanical cell interactions

本論文は、機械的な細胞相互作用を考慮した離散モデルと、それを連続体極限として導出した反応拡散方程式の両方を提示し、これらが実験的に観察される組織の平滑化挙動を再現し、細胞密度の進化と曲率依存性を説明する数学的枠組みを確立したものである。

Kuba, S., Simpson, M. J., Buenzli, P. R.2026-03-12⚛️ biophysics

Introducing a proline in the α1 M2-M3 linker relieves a molecular brake on channel activation in α1β2γ2 GABAA receptors

本研究は、α1β2γ2 GABA_A 受容体においてα1 亜基の M2-M3 リンカーにプロリンを導入することで、チャネルの活性化に対する分子ブレーキが解除され、GABA 感受性の向上と自発的活性の誘発がもたらされることを明らかにしました。

Desai, N. G., Garlapati, P., Borghese, C. M., Goldschen-Ohm, M. P.2026-03-12⚛️ biophysics

Chlamylipo, a Chlamydomonas-in-liposome microswimmer: self-propelled swimming and associated lipid membrane flow

本研究は、緑藻クロレラを巨大リポソーム内に封入したバイオハイブリッド微小遊泳体「Chlamylipo」を開発し、鞭毛の運動がリポソーム膜の変形と粘性摩擦を介して外部流体に力を伝達することで、内部動力が封入されたマクロな容器の推進を可能にすることを物理的に解明したものである。

Shiomi, S., Akiyama, K., Shiraiwa, H., Hamaguchi, S., Matsunaga, D., Kaneko, T., Hayashi, M.2026-03-12⚛️ biophysics

A DNA deliverer-receiver mechanism for DNA recruitment in phase-separated transcriptional condensates

大規模分子動力学シミュレーションにより、多能性維持に関わる転写因子 Nanog、Oct4、Sox2 が形成する凝縮体において、DNA の存在下で Nanog と Sox2 が DNA を凝縮体内へ運び(デリバー)、Oct4 がそれを受け取る(レシーバー)という非加算的な協調メカニズムが働くことが明らかにされました。

Blazquez, S., Yamauchi, M., Terakawa, T.2026-03-11⚛️ biophysics

Structure and conformational dynamics of the Pseudomonas CbrA transceptor

本研究は、Pseudomonas 属の炭素代謝や病原性に関与するトランスセプター CbrA のクライオ電子顕微鏡構造を解明し、小ペプチド CbrX との安定な複合体形成やヒスチジン結合様式、およびプロトン勾配に依存した輸送サイクルの分子機構を初めて明らかにした。

Orlando, M. A., Shah, T., Faber, M. W., Bose, S., Orlando, B. J.2026-03-11⚛️ biophysics