生命の謎を物理の法則で解き明かすのが生物物理学です。細胞の動きからタンパク質の形まで、目に見えない微观の世界を数式や実験で可視化し、生きている現象そのものを理解しようとする分野です。

Gist.Science は、この分野の最新研究成果を bioRxiv から収集し、すべてを網羅的に処理しています。専門用語の壁を越えるため、各論文の平易な要約と、技術的な詳細なまとめの両方を提供し、誰でも最新の知見に触れられるようにしています。

以下に、bioRxiv から新たに公開された生物物理学の論文一覧を掲載します。最新の発見をぜひご確認ください。

Molecular design principles for Photosystem I-based biohybrid solar fuel catalysts

本研究は、光合成システム I(PSI)と白金ナノ粒子を組み合わせたバイオハイブリッド触媒の活性を決定づける分子メカニズムを解明するため、熱帯性および中温性の PSI スケラフォールドや末端鉄硫黄クラスターの有無を比較した 2 つの活性複合体の分子構造を初めて決定し、タンパク質 - ナノ粒子界面の幾何学的・電気的性質と触媒性能の相関を明らかにすることで、太陽燃料生成システムの合理的設計指針を確立した。

Emerson, M. D., Damaraju, S. N. S., Short, A. H., Alvord, Z. B., Palmer, Z. A., Mehra, H. S., Brininger, C. M., Vermaas, J. V., Utschig, L. M., Gisriel, C. J.2026-03-25⚛️ biophysics

Repetitive extragenic palindrome (REP) elements are local, context-dependent, dual 3'UTR regulators in Escherichia coli

本論文は、大腸菌の反復配列 REP が染色体凝縮ではなく、転写終結と mRNA 安定化という二重の役割を文脈依存的に担うことで遺伝子発現を調節し、菌株間の発現多様性や既往の矛盾する知見を統合する新たなメカニズムを解明したことを示しています。

Harris, F. E., Hu, Y., Verma, S., Adhya, S., Zhou, W., Xiao, J.2026-03-25⚛️ biophysics

A Dynamic Oligomerization Network Coordinates Hemagglutinin-Mediated Membrane Fusion on Influenza Virions

本研究は、クライオ電子トモグラフィとサブトモグラム平均化を用いてインフルエンザウイルス上のヘマグルチニン(HA)の構造を解明し、HA 1 サブユニット間の側面相互作用が HA トリマーを動的にオリゴマー化させ、膜融合の協調的な活性化を制御する機構を初めて明らかにしたものである。

Chen, Y., Zhang, Z., Zhao, Z., Liu, H., Zhao, H., Liang, R., Peng, C., Xu, J., Song, Y., Tan, X., Li, S.2026-03-25⚛️ biophysics

MORPHIS (MORPHological Interpretable Signature) captures heterogeneous treatment- and aging-related responses of single cells

本論文は、顕微鏡画像から抽出された解釈可能な形態特徴に基づき、機械学習と統計手法を組み合わせることで、単一細胞レベルでの薬剤応答や老化に伴う細胞の形態変化を定量的かつ解釈可能に評価する汎用的なフレームワーク「MORPHIS」を提案し、その有効性を複数の細胞種および生物モデルで実証したものである。

Bohr, F., Oikonomou, A., Nielsen, E. E. M., Konstantinidis, G., Mortensen, J. S., Tavernarakis, N., Nielsen, H. M., Hatzakis, N. S.2026-03-25⚛️ biophysics

Sequence determinants of the hypomobility of intrinsically disordered proteins in SDS-PAGE

本論文は、合成の低複雑性ドメインを用いた解析を通じて、SDS-PAGE における内在性無秩序タンパク質の異常な低移動度が、負電荷や中性極性残基によって促進され、正電荷や疎水性残基によって抑制されるなど、アミノ酸配列の非加法的な組み合わせに依存することを明らかにし、タンパク質装飾ミセルモデルによってこれを説明可能であることを示した。

Garg, A., Gielnik, M. B., Kjaergaard, M.2026-03-25⚛️ biophysics

CGRig: a rigid-body protein model with residue-level interaction sites for long-time and large-scale protein assembly simulation

本論文は、アミノ酸残基レベルの相互作用サイトを備えた剛体タンパク質モデル「CGRig」を提案し、大規模かつ長時間のタンパク質集合シミュレーションにおいて、原子レベルの精度を維持しつつ計算効率を飛躍的に向上させることを示しています。

Teshirogi, Y., Terada, T.2026-03-24⚛️ biophysics

A Novel Eukaryotic Ribosome Factor Enables Translation Restart Following Cellular Dormancy

この論文は、グルコース枯渇による休眠中にリボソームの機能を抑制し、栄養回復時にタンパク質合成の再開を可能にする新規因子 SNOR を発見し、それが真核生物の休眠と翻訳制御のメカニズム解明に新たな知見をもたらしたことを報告しています。

Gluc, M., Rosa, H., Bozko, M., Turner, L. A., Prince, C. R., Peskova, Y., Feaga, H. A., Gould, K. L., Mattei, S., Jomaa, A.2026-03-24⚛️ biophysics

Adenosine 5'-triphosphate (ATP) forms protein-free and responsive condensates in crowded environments

本研究は、マクロ分子混雑環境下で ATP がタンパク質を介さずに自己会合し、刺激応答性の液体状凝縮体を形成して RNA を保護する新たな機能を発見し、ATP を単なるエネルギー担体から細胞生理や前生物化学における構造的・調節的アーキテクトへと再定義する成果を示しています。

Wang, Y., Chen, F., Dang Kow, P., Shum, H. C.2026-03-24⚛️ biophysics

Investigator-blind discovery of structural elements controlling GPCR function

本論文では、分子動力学シミュレーションの大量データから研究者のバイアスを排除して解析するパイプラインを開発し、GPCR の機能転移に関与する既知のマイクロスイッチに加え、TM2 のキックと TM2・TM3 の連動したピストン様運動という 2 つの新たな構造モチーフを同定したことを報告しています。

Ji, J., Lyman, E.2026-03-24⚛️ biophysics