物質の性質を温度や圧力などの巨視的な現象と、原子や分子の微視的な振る舞いを結びつけるのが統計力学です。この分野では、無数の粒子が織りなす複雑な集団行動から、熱や圧力といった日常の物理法則がどのように導き出されるかを解明します。

Gist.Science では、arXiv に投稿された統計力学関連の最新プレプリントをすべて対象に、専門家が執筆した平易な解説と詳細な技術的サマリーを提供しています。複雑な数式に囲まれた研究を、誰もが理解できる形に翻訳することで、科学の最前線を広く共有することを目指しています。

以下に、統計力学の分野から選り抜かれた最新の論文リストを掲載します。

⚛️ quantum physics

Asymptotic freedom in the dephased charging of quantum batteries

この論文は、制御された純粋な脱位(dephasing)下で星型配列の N 個の量子ビットからなる量子バッテリーを駆動する充電プロセスを研究し、N の増加に伴ってバッテリーの定常状態におけるエルゴトロピーとエネルギーの比率が 1 に漸近する「漸近的自由性」のような振る舞いが、混合状態であっても集団基底状態の縮退の出現によって実現されることを示しています。

Chayan Purkait, B. Prasanna Venkatesh, Gentaro Watanabe2026-03-31
🔬 physics

Nonequilibrium protein complexes as molecular automata

この論文は、駆動された非平衡酵素反応を受けるタンパク質複合体が、細胞オートマトンの確率的非同期変種として振る舞い、多安定アトラクタによるエラー耐性メモリや有限状態機械の実装など、生細胞内でのタンパク質ベースの計算を可能にする新しい枠組みを提供することを示しています。

Jan Kocka, Kabir Husain, Jaime Agudo-Canalejo2026-03-31
🔬 condensed matter

Emerging correlations between diffusing particles evolving via simultaneous resetting with memory

本論文は、過去の位置への確率的なリセット(記憶)を伴う拡散過程において、リセットの記憶の強さに応じて成分間の相関が単調増加するか非単調に変化するかなど、異なる時間発展を示すことを明らかにし、条件付き独立性の観点からこれを統一的に記述することを示しています。

Denis Boyer, Satya N. Majumdar2026-03-31
⚛️ high-energy theory

2D or not 2D: a "holographic dictionary" for Lowest Landau Levels

この論文は、回転調和トラップ内の 2 次元フェルミオン系(最低ランダウ準位を含む)において、2 次元量子力学が 1 次元量子力学と厳密に対応し、フェルミ粒子密度の上限や非可換空間特有のエンタングルメントエントロピーの振る舞い、およびクエench 後のダイナミクスを 2 次元位相空間流体力学の手法を用いて 1 次元で記述できることを示しています。

Gautam Mandal, Ajay Mohan, Rushikesh Suroshe2026-03-31
🔬 condensed matter

Fractional epidemics from quantum loops

本論文は、Doi-Peliti 形式を用いた非平衡量子場理論モデルから第一原理的に導出された動的なホスト真空の積分により、現実の感染症流行に見られる重尾バースト動力学や長距離相関を記述する時空間分数微分方程式が自然に現れ、有効再生数 ReffR_{eff} がスカラーから紫外空間切断で厳密に制限されたスペクトル分散関係へと変容することを示しています。

Jose Jesus Bernal-Alvarado, David Delepine2026-03-31
🔬 condensed matter

Nonequilibrium from Equilibrium: Chiral Current-Carrying States in the Spin-1 Babujian-Takhtajan Chain

本研究は、スピン 1 バジュニアン・タハチャジャン鎖に第 3 保存量(局所スカラーカイラリティ演算子)を摂動として加えることで、固有状態を変えずにエネルギー流を誘起する局所的かつ厳密に解けるモデルを構築し、臨界点を超えると c=3/2c=3/2 の共形場理論で記述される非平衡のカイラル電流状態が現れることを熱力学ベテアンサスおよび DMRG により示しました。

Bahar Jafari-Zadeh, Chenan Wei, Hrachya M. Babujian, Tigran A. Sedrakyan2026-03-31