物質の性質を温度や圧力などの巨視的な現象と、原子や分子の微視的な振る舞いを結びつけるのが統計力学です。この分野では、無数の粒子が織りなす複雑な集団行動から、熱や圧力といった日常の物理法則がどのように導き出されるかを解明します。

Gist.Science では、arXiv に投稿された統計力学関連の最新プレプリントをすべて対象に、専門家が執筆した平易な解説と詳細な技術的サマリーを提供しています。複雑な数式に囲まれた研究を、誰もが理解できる形に翻訳することで、科学の最前線を広く共有することを目指しています。

以下に、統計力学の分野から選り抜かれた最新の論文リストを掲載します。

🔬 condensed matter

Coarse-graining nonequilibrium diffusions with Markov chains

この論文は、有限体積法を用いて非平衡定常状態の拡散過程を離散状態マルコフ連鎖で近似する手法を提案し、エントロピー生成率の収束性を示すとともに、連続軌道からの離散モデル推定がエントロピー生成率を過小評価するものの非平衡状態の検出には有用であることを、数値実験および魚の群れ行動データを用いて実証しています。

Ramón Nartallo-Kaluarachchi, Renaud Lambiotte, Alain Goriely2026-03-03
🔬 materials science

Rheology of dense vibrated granular flows: non-monotonic response controlled by granular temperature

数値シミュレーションを用いた研究により、密な振動粉体流動のレオロジー特性が、粒子的な振動エネルギーと閉じ込め効果のバランスによって支配され、特に振動周波数に対する非単調な応答(中間周波数での流動化と高周波数でのその消失)を説明できることを示しました。

A. Plati, G. Petrillo, L. de Arcangelis, A. Gnoli, A. Puglisi, A. Sarracino, E. Lippiello2026-03-03
🔬 condensed matter

Coarse-grained Shannon entropy of random walks with shrinking steps

この論文は、幾何学的に減衰するステップを持つランダムウォーク(ベルヌーイ畳み込み)において、拡散によるエントロピー増大と多階層フラクタル構造による減少が競合し、特に縮小率 1/2 の近傍で粗粒度シャノンエントロピーが局所最大値を示すことを解析・数値的に明らかにし、その知見を原始細胞の自己複製や小胞増殖の生物物理モデルとの関連性を含めて論じている。

Alexander Feigel, Alexandre V. Morozov2026-03-03
🔬 condensed matter

Condensation in stochastic lattice gases with size-dependent stationary weights

この論文は、サイズ依存の定常重みを持つ確率的格子気体において、粒子密度が臨界値を超えると凝縮相転移が生じることを示し、特にサイズバイアスサンプリングを用いてクラスターサイズ分布を導出することで、ゼロ範囲過程や包含過程に関する先行研究を一般化している。

Joshua Blank, Paul Chleboun, Stefan Grosskinsky, Watthanan Jatuviriyapornchai2026-03-03
🔢 mathematics

A Leibniz rule of distributional pairing and hyperforce sum rule

この論文は、シュワルツ空間とその双対空間における超関数の対の微分に関するライプニツ則を用いて、平衡状態のハイパーフォース総和則および任意レベルの BBGKY 階層を再定式化・一般化し、ユークリッド空間および周期的境界条件を持つ系への適用を示しています。

Takashi Maruyama, Tatsuki Seto, Viktor Zaverkin, Henrik Christiansen2026-03-03
🔬 condensed matter

Magnetization plateaus, spin-canted orders and field-induced transitions in a spin-1/2 Heisenberg antiferromagnet on a distorted diamond-decorated honeycomb lattice

この論文は、歪んだダイヤモンド装飾ハニカム格子におけるスピン 1/2 反強磁性ヘisenberg 模型を、DMRG や量子モンテカルロ法などの多角的な手法で解析し、外部磁場下で生じる多様な量子相や、局所シングレットの競合に起因する 0、1/4、1/2、3/4 の磁化プラトーを明らかにしたものである。

Katarina Karlova, Jozef Strecka2026-03-03
🔬 condensed matter

Symmetry-Induced Logarithmic Relaxation in the Quantum Kicked Rotor

量子カックドローターにおいて、初期運動量がゼロである場合に生じる離散対称性が、スペクトル相関を変化させて準縮重フロケ二重項を形成し、これがコヒーレントな量子系においてガラス的なダイナミクスに特徴的な対数緩和を引き起こすことを示しました。

Julien Hébraud, Floriane Arrouas, Bruno Peaudecerf, Juliette Billy, David Guéry-Odelin, Olivier Giraud, Bertrand Georgeo (…)2026-03-03