物質の性質を温度や圧力などの巨視的な現象と、原子や分子の微視的な振る舞いを結びつけるのが統計力学です。この分野では、無数の粒子が織りなす複雑な集団行動から、熱や圧力といった日常の物理法則がどのように導き出されるかを解明します。

Gist.Science では、arXiv に投稿された統計力学関連の最新プレプリントをすべて対象に、専門家が執筆した平易な解説と詳細な技術的サマリーを提供しています。複雑な数式に囲まれた研究を、誰もが理解できる形に翻訳することで、科学の最前線を広く共有することを目指しています。

以下に、統計力学の分野から選り抜かれた最新の論文リストを掲載します。

🔬 condensed matter

Ensemble inequivalence in the design of mixtures with super-Gibbs phase coexistence

この論文は、多成分混合物においてギブスの相則を超える超ギブス相共存を設計する際、相互作用を調整することで実現可能な大正準集団の相が、界面張力の制約により実験的に重要な正準集団では部分的にしか現れないことを示し、グラフ理論を用いた不等式条件によって両者の等価性を回復させる設計手法を提案している。

Filipe C. Thewes, Peter Sollich2026-02-17
⚛️ high-energy theory

Dynamical Phases of Higher Dimensional Floquet CFTs

この論文は、4 次元超時空におけるフロケ CFT のダイナミカル相を、クォータニオン表現と摂動論を用いて解析し、加熱・臨界・非加熱相がそれぞれ AdS 空間や基底空間における非極限・極限・消失するキリング・ホライズンの幾何学的性質に対応することを明らかにした。

Diptarka Das, Sumit R. Das, Arnab Kundu, Krishnendu Sengupta2026-02-17
⚛️ nuclear experiments

Enhancement of photon emission rate near QCD critical point

この論文は、QCD 臨界点近傍における動的臨界現象の有効理論を用いて光子放出率を計算し、相関長に比例して増大し臨界点で発散する普遍的光子スペクトル(ωdNγ/d3kω1/2\omega dN_\gamma/d^3k \propto \omega^{-1/2})を導出したことを報告しています。

Yukinao Akamatsu, Masayuki Asakawa, Masaru Hongo, Mikhail Stephanov, Ho-Ung Yee2026-02-17
🔬 condensed matter

Multiscale complexity of two-dimensional Ising systems with short-range, ferromagnetic interactions

本論文は、情報理論的アプローチであるマルチスケール複雑性プロファイルを二次元イジングモデルに適用し、臨界領域でのみ検出される多スケール構造の出現を通じて秩序相と無秩序相の転移を捉え、磁気ドメインの形成や臨界現象の隠れた特徴を解明する手法の有効性を示しています。

Ibrahim Al-Azki, Valentina Baccetti2026-02-17
🔬 condensed matter

Random planting with harvest: A statistical-mechanical analysis

この論文は、重なりを避ける成長硬円盤モデルとしてのランダムな植栽・収穫プロセスを統計力学の枠組みで記述し、非加法的多分散硬円盤流体への写像や低密度ビリアル展開、スケーリング粒子理論を用いて定常状態の密度や空間構造を解析的に予測し、数値シミュレーションと高い一致を示すことを明らかにしたものである。

Julian Talbot2026-02-17
⚛️ quantum physics

Ward-Takahashi Identity and Gauge-Invariant Response Theory for Open Quantum Systems

本論文は、リンドブラッド形式で記述される開放量子系において粒子数保存則が成り立たなくてもゲージ不変性が満たされることを示し、ワード・高橋恒等式やゲージ不変な応答理論を導出するとともに、二体損失が BCS 超伝導に拡散的な集団励起モードを誘起することを明らかにしています。

Hongchao Li, Xie-Hang Yu, Masaya Nakagawa, Masahito Ueda2026-02-17
🔬 condensed matter

NMR study on equilateral triangular lattice antiferromagnet Ba2La2CoTe2O12

Ba2La2CoTe2O12 における 139La-NMR 研究により、3.26 K での 120 度スピン秩序、3 T 以上の磁場下での up-up-down 相および三角形共面相への転移、およびそれぞれの転移点における核スピン格子緩和率や線幅の異常な挙動が明らかにされました。

Keito Morioka, Takayuki Goto, Masari Watanabe, Yuki Kojima, Nobuyuki Kurita, Hidekazu Tanaka, Satoshi Iguchi, Takahiko S (…)2026-02-17