「Nucl-Ex」は、原子核そのものの構造や性質、そして高エネルギーの衝突実験によって生まれる物質の振る舞いを解明する実験物理学の分野です。ここでは、素粒子の集まりがどのようにして宇宙の基礎を形作っているのか、あるいは極限状態でのみ現れる物質の新たな姿について、最先端の知見が日々積み重ねられています。

Gist.Science では、arXiv に投稿されるこの分野の全ての新しいプレプリントを網羅的に収集・処理しています。専門用語に埋もれがちな複雑な研究成果を、誰でも理解できる平易な解説と、技術的な詳細を網羅した要約の両面で提供し、科学の最前線へのアクセスを民主化します。

以下に、この分野から直近で arXiv に公開された論文の一覧を掲載します。

Inelastic nucleon-nucleus scattering from a microscopic point of view

本論文は、ワトソン多重散乱理論とインパルス近似に基づき、非局所的な第一原理核密度とカイラル相互作用を用いたtt行列を折りたたんで得られるポテンシャルのみを用いて、自由パラメータなしで炭素 12 に対する非弾性陽子散乱の実験データを高精度に記述する完全コヒーレントな微視的多重散乱アプローチを提案し、その有効性を示したものである。

Matteo Vorabbi, Michael Gennari, Paolo Finelli, Carlotta Giusti, Petr Navrátil2026-03-30⚛️ nucl-th

Probing Sub-MeV Dark Matter with Neutron-Capture γ\gamma Spectroscopy

本論文は、中性子捕獲後の核励起状態からの崩壊において、既知のγ\gamma線から共通のエネルギーシフトΔ\Deltaだけ低い位置に現れる複数の微弱な「衛星線」の相関を解析することで、核構造の曖昧さや機器由来のアーティファクトを抑制し、サブ MeV 領域の暗黒物質を検出するための包括的な発見枠組みを提案するものである。

B. Meirose, D. Milstead2026-03-30⚛️ nucl-ex

Wideband Search for Axionlike Dark Matter Using Octupolar Nuclei in a Crystal

この論文は、結晶中の153^{153}Eu イオンにおける振動するパリティ非保存・時間反転非保存のシュフ・モーメントを検出する実験を通じて、アルキロン様暗黒物質の質量範囲を 8 桁にわたって広帯域にわたって探索し、そのクォーク・グルーオン結合に対する新たな制約を導出したことを報告しています。

Mingyu Fan, Bassam Nima, Aleksandar Radak, Gonzalo Alonso-Álvarez, Amar Vutha2026-03-27⚛️ nucl-ex

Dynamical Causal Horizons and the Quarkonium Flow Paradox

この論文は、重クォークニウムが初期の強い色弦張力によって生じる動的ホーキング・アンルー因果地平線を超えて結合できなくなるという幾何学的メカニズムを提案し、これにより重陽子衝突におけるsequential suppressionの階層性と、楕円流(v2v_2)が観測されないという矛盾を、熱平衡状態の形成ではなく因果的な結合の切断によって統一的に説明するものである。

Yi Yang2026-03-27⚛️ hep-ph

Diffractive and photon-induced processes at the LHC: from the odderon discovery, the evidence for saturation to the search for axion-like particles

本論文は、TOTEM と D0 コラボレーションによるオドネロンの発見、Pb-Pb 衝突における飽和現象の観測可能性、および光子対相互作用を介したアルキオン様粒子の探索を含む、LHC における回折過程および光子誘起過程の最新成果を概説している。

C. Royon2026-03-27⚛️ hep-ex

First measurement of Σ+nΛp\Sigma^{+}n\rightarrow\Lambda p and Σ+nΣ0p\Sigma^{+}n\rightarrow\Sigma^{0}p cross sections via Σ+\Sigma^+-nucleus scattering at an electron-positron collider

BESIII 実験において、電子・陽電子衝突型加速器で生成されたΣ+\Sigma^+がビームパイプ内の原子核と散乱する過程を初めて観測し、Σ+nΛp\Sigma^{+}n\rightarrow\Lambda pおよびΣ+nΣ0p\Sigma^{+}n\rightarrow\Sigma^{0}p反応の断面積を測定しました。

BESIII Collaboration, M. Ablikim, M. N. Achasov, P. Adlarson, X. C. Ai, R. Aliberti, A. Amoroso, Q. An, Y. Bai, O. Bakina, Y. Ban, H. -R. Bao, V. Batozskaya, K. Begzsuren, N. Berger, M. Berlowski, M. (…)2026-03-26⚛️ nucl-ex

Phenomenological Modeling of the 163^{163}Ho Calorimetric Electron Capture Spectrum from the HOLMES Experiment

HOLMES 実験で測定された163^{163}Ho の電子捕獲スペクトルについて、高統計データを用いてブロードウィグ・ワイゼン共鳴とシェイクオフ連続体の和としてモデル化し、原子の励起緩和過程に基づく包括的な現象論的解析を行うことで、ニュートリノ質量測定に不可欠な端点領域の正確な記述や背景事象の扱いを可能にし、将来のカロリメトリック実験の基盤を確立した。

F. Ahrens, B. K. Alpert, D. T. Becker, D. A. Bennett, E. Bogoni, M. Borghesi, P. Campana, R. Carobene, A. Cattaneo, A. Cian, H. A. Corti, N. Crescini, M. De Gerone, W. B. Doriese, M. Faverzani, L. Fer (…)2026-03-26⚛️ nucl-ex

The High Level Trigger and Express Data Production at STAR

STAR 実験は、RHIC のビームエネルギー・スキャン第 2 フェーズの要求に応えるため、リアルタイムなイベント選別を行う高レベルトリガー(HLT)と、数時間以内に高品質な再構成を行うエクスプレスデータ生成システム(xProduction)という二重のリアルタイムフレームワークを開発し、これにより Λ5He{}^5_{\Lambda}\mathrm{He} 超核の迅速な再構成や大規模データ処理の効率化を実現した。

Wayne Betts, Jinhui Chen, Yuri Fisyak, Hongwei Ke, Ivan Kisel, Pavel Kisel, Grigory Kozlov, Jeffery Landgraf, Jerome Lauret, Tonko Ljubicic, Yugang Ma, Spyridon Margetis, Hao Qiu, Diyu Shen, Qiye Shou (…)2026-03-26⚛️ nucl-ex