「Nucl-Ex」は、原子核そのものの構造や性質、そして高エネルギーの衝突実験によって生まれる物質の振る舞いを解明する実験物理学の分野です。ここでは、素粒子の集まりがどのようにして宇宙の基礎を形作っているのか、あるいは極限状態でのみ現れる物質の新たな姿について、最先端の知見が日々積み重ねられています。

Gist.Science では、arXiv に投稿されるこの分野の全ての新しいプレプリントを網羅的に収集・処理しています。専門用語に埋もれがちな複雑な研究成果を、誰でも理解できる平易な解説と、技術的な詳細を網羅した要約の両面で提供し、科学の最前線へのアクセスを民主化します。

以下に、この分野から直近で arXiv に公開された論文の一覧を掲載します。

Mass spectrometry of 75^{75}Zn ground and isomeric states from in-trap decay of 75^{75}Cu

ISOLTRAP 装置を用いた捕獲内崩壊法により、75^{75}Zn の基底状態と第一励起準位の高精度質量測定を初めて実施し、励起エネルギーの確定と基底状態質量過剰の修正、ならびにスピン・パリティの理論的検討を通じて基底状態がスピン 1/2 であることを強く支持する結果を得ました。

M. Müller, N. A. Althubiti, D. Atanasov, K. Blaum, R. B. Cakirli, T. E. Cocolios, F. Herfurth, S. Kreim, D. Lunney, V. Manea, N. Minkov, D. Neidherr, M. Rosenbusch, L. Schweikhard, A. Welker, F. Wienh (…)2026-03-17⚛️ nucl-ex

Jet peak shapes based on two-particle angular correlations in lead-lead collisions at sNN\sqrt{{s_{\mathrm{NN}}}} = 5.02 TeV

CMS 検出器を用いた 5.02 TeV の鉛 - 鉛衝突データに基づき、ジェット誘起ピークの形状(幅と非対称性)が横運動量、衝突中心度、および擬陽速度にどのように依存するかを調べ、その結果を同じエネルギーの陽子 - 陽子衝突データと比較した研究です。

CMS Collaboration2026-03-17⚛️ nucl-ex

Decay-Resolved Charge Changes from Radioactive Decays in Levitated Microparticles

この論文は、光浮遊させた微粒子内の放射性崩壊に伴う電荷の離散的な変化を、近傍のシンチレーション検出器と連動してミリ秒単位で計測・相関解析することで、個々の崩壊事象に起因する電荷変化を特定し、α崩壊とβ崩壊で放出される電荷の分布の違いを明らかにしたことを報告しています。

Jiaxiang Wang, T. W. Penny, Yu-Han Tseng, Benjamin Siegel, David C. Moore2026-03-17⚛️ nucl-ex

Sources of Radial Flow Fluctuations in the Quark-Gluon Plasma

この論文は、クォーク・グルーオンプラズマにおける微分半径方向フロー揺らぎの「上昇・下降」パターンを、スペクトル形状に起因する運動学的因子と、LHC 中央衝突で 20〜40% の偏差を示す動的因子に分解する新しい枠組みによって説明し、これにより媒質の性質をより厳密に制約できることを示しています。

Jiangyong Jia2026-03-16⚛️ nucl-ex

π\pi, K, and p production in high-multiplicity pp collisions at s=13\sqrt{s} = 13 TeV

ALICE 実験により、LHC の 13 TeV 陽子 - 陽子衝突の高多重度事象におけるπ\pi、K、p 粒子の生成を測定した結果、重イオン衝突で観測されるような質量依存のpTp_{\rm T}スペクトル硬化や中間pTp_{\rm T}領域での p/π\pi比の増大が確認され、粒子生成が衝突エネルギーや系サイズではなく荷電粒子多重度にスケーリングすることが示唆されたが、PYTHIA 8 や EPOS4 などの既存モデルはこれらの特徴を完全に再現できていない。

ALICE Collaboration2026-03-16⚛️ nucl-ex

Measurement of correlations between elliptic flow and mean transverse momentum in pp, p-Pb, and Pb-Pb collisions at the LHC

ALICE 実験の LHC Run 2 データを用いた pp、p-Pb、Pb-Pb 衝突における楕円流と平均横運動量の相関測定により、小規模衝突系における集団的現象の起源や初期状態の理解が深められ、既存の理論モデルに対する強い制約が課されたことが報告されています。

ALICE Collaboration2026-03-16⚛️ nucl-ex

Hidden Light Scalars in Heavy-Ion Collisions: A Phenomenological Resolution to High-pTp_T Quarkonium Anomalies

LHC における高横運動量領域でのΥ(1S)\Upsilon(1S)状態の異常な振る舞い(RAAR_{AA}の平坦化やv2v_2の消失など)を、質量約 9.40 GeV の隠れた暗黒スカラー粒子ϕ\phiの混合によって説明し、これがクォーニウム偏極問題の解決や低pTp_T領域での過去の探索結果との整合性をもたらすことを示しています。

Yi Yang2026-03-13⚛️ nucl-ex

Production of high-spin ωJ/ρJ\omega_J/\rho_J (J=2,3,4,5J=2,3,4,5) mesons in πp\pi^{-}p reactions

この論文では、有効ラグランジュアン手法を用いてπp\pi^- p反応における高スピンωJ/ρJ\omega_J/\rho_Jメソンの生成を包括的に研究し、既知のJ=3J=3状態のデータを再現するモデルを構築することで、J=2J=2から$5までの未観測または未確認状態の生成断面積を予測し、将来のまでの未観測または未確認状態の生成断面積を予測し、将来の\pi p$実験での観測可能性を示唆しています。

Ting-Yan Li, Zi-Yue Bai, Xiang Liu2026-03-12⚛️ nucl-ex

Finite-Size Scaling of Net-Proton Cumulants in Heavy-Ion Collisions: Remarks on the Interpretation of a Recent Analysis

この論文は、相対論的重イオン衝突におけるネット陽子累積量を用いた有限サイズスケーリング解析が、QCD 相図の臨界終点の存在を示唆する最近の主張に対して、受入範囲の定義やスケーリング変数の扱いなどの点から再検討を加え、その解釈と実施の一貫性を明確化するものである。

Roy A. Lacey (Department of Chemistry, Stony Brook University, Stony Brook, NY, USA)2026-03-12⚛️ nucl-th