「Nucl-Ex」は、原子核そのものの構造や性質、そして高エネルギーの衝突実験によって生まれる物質の振る舞いを解明する実験物理学の分野です。ここでは、素粒子の集まりがどのようにして宇宙の基礎を形作っているのか、あるいは極限状態でのみ現れる物質の新たな姿について、最先端の知見が日々積み重ねられています。

Gist.Science では、arXiv に投稿されるこの分野の全ての新しいプレプリントを網羅的に収集・処理しています。専門用語に埋もれがちな複雑な研究成果を、誰でも理解できる平易な解説と、技術的な詳細を網羅した要約の両面で提供し、科学の最前線へのアクセスを民主化します。

以下に、この分野から直近で arXiv に公開された論文の一覧を掲載します。

Direct Neutron Reactions in Storage Rings Utilizing a Supercompact Cyclotron Neutron Target

この論文は、超コンパクトサイクロトロンを駆動源とした高密度自由中性子ターゲットの新概念を提案し、放射性イオンを循環させるストレージリングと組み合わせることで、宇宙における重元素合成の解明に向けた短寿命核の中性子捕獲反応測定を可能にする画期的な手法を提示しています。

Ariel Tarifeño-Saldivia, César Domingo-Pardo, Iris Dillmann, Yuri A. Litvinov2026-03-10🔬 physics

Observation of charmonium sequential suppression in heavy-ion collisions at the Relativistic Heavy Ion Collider

STAR 実験により、RHIC における Ru+Ru および Zr+Zr 衝突で、J/ψ\psiに比べてψ\psi(2S) がより強く抑制される「チャロニウムの逐次抑制」が、統計的有意性 5.6σ\sigmaで初めて観測されたことが報告されています。

STAR Collaboration, B. E. Aboona, J. Adam, L. Adamczyk, I. Aggarwal, M. M. Aggarwal, Z. Ahammed, A. K. Alshammri, E. C. Aschenauer, S. Aslam, J. Atchison, V. Bairathi, X. Bao, P. Barik, K. Barish, S. (…)2026-03-10⚛️ nucl-ex

Probing the Three-dimension Emission Source and Neutron Skin via ππ-ππ Correlations in Heavy-Ion Collisions

この論文は、重イオン衝突における同一パイオンの相関関数からリチャードソン・ルーシー法を用いて三次元放射源を再構成し、その手法が重原子核の中性子スキン厚の探査に有効であることを示しています。

Haojie Zhang, Junhuai Xu, Pengcheng Li, Zhi Qin, Dawei Si, Yijie Wang, Yongjia Wang, Qingfeng Li, Zhigang Xiao2026-03-10⚛️ nucl-ex

ββ-Decay Half-Lives Serve as Novel Evidence for the New Magic Number N=32N=32

本論文は、ベータ崩壊半減期の測定結果から、カルシウム同位体において顕著な、カリウム同位体においてやや弱いものの、アルゴンおよび塩素同位体では見られない新たな魔法数 N=32 の存在を初めて示唆する証拠を提供している。

L. Guo, Z. H. Wang, X. L. Zhi, Y. F. Niu, W. H. Long, Z. M. Niu, Q. B. Zeng, Z. Liu2026-03-10⚛️ nucl-ex

Constraining the neutron skin of 208^{208}Pb with anisotropic flow in Pb+Pb collisions at the LHC

LHC における Pb+Pb 衝突の異方性流れの解析を通じて、208^{208}Pb の中性子スキンが衝突の全輸送進化を通じて残存し、ALICE データとの比較により大規模な中性子スキンは排除されるものの、ゼロと中程度のスキンが幾何学的な縮退により同様に記述されることから、現在の異方性流れ測定には中性子スキンを厳密に拘束する感度の限界があることが示されました。

Xin-Li Zhao, Xin-Yi Xie, Yuan Li, Guo-Liang Ma2026-03-10⚛️ nucl-ex

Characterization of the Low Energy Excess using a NUCLEUS Al2O3Al_2O_3 detector

NUCLEUS 実験のサファイア検出器を用いた研究により、低エネルギー過剰事象(LEE)の発生率が粒子背景放射線に依存せず、冷却速度や時間経過(4 K 到達後)によって変化する様子が明らかになり、将来の LEE 低減戦略に重要な知見が得られた。

H. Abele (NUCLEUS Collaboration), G. Angloher (NUCLEUS Collaboration), B. Arnold (NUCLEUS Collaboration), M. Atzori Corona (NUCLEUS Collaboration), A. Bento (NUCLEUS Collaboration), E. Bossio (NUCLEUS (…)2026-03-10🔬 physics

Physics-Informed Global Extraction of the Universal Small-xx Dipole Amplitude

この論文は、物理情報に基づくニューラルネットワーク(PINN)を用いて事前の仮定なしに普遍的な小xx双極子散乱振幅を抽出し、従来のパラメトリックな仮定に基づく手法で見られた総断面積とチャーム断面積の間の長年の不一致を解消するとともに、コリニア改善されたバルツィツキー・コヴチェゴフ方程式と深非弾性散乱データを同時に制約することで、カラーガラス凝縮体の現象論に堅牢な入力を提供する手法を提案しています。

Si-Wei Dai, Fu-Peng Li, Long-Gang Pang, Guang-You Qin, Shu-Yi Wei, Han-Zhong Zhang, Wenbin Zhao2026-03-10⚛️ hep-ph