「Nucl-Ex」は、原子核そのものの構造や性質、そして高エネルギーの衝突実験によって生まれる物質の振る舞いを解明する実験物理学の分野です。ここでは、素粒子の集まりがどのようにして宇宙の基礎を形作っているのか、あるいは極限状態でのみ現れる物質の新たな姿について、最先端の知見が日々積み重ねられています。

Gist.Science では、arXiv に投稿されるこの分野の全ての新しいプレプリントを網羅的に収集・処理しています。専門用語に埋もれがちな複雑な研究成果を、誰でも理解できる平易な解説と、技術的な詳細を網羅した要約の両面で提供し、科学の最前線へのアクセスを民主化します。

以下に、この分野から直近で arXiv に公開された論文の一覧を掲載します。

Impact of Geometric Inflation on Nucleon Size Sensitivity in Relativistic Heavy-Ion Collisions

LHC における Pb-Pb 衝突のハイブリッドシミュレーションを用いた本研究は、初期状態モデルにおける「幾何学的膨張」アーチファクトを除去する自己無撞着な密度補正を導入することで、楕円流や平均横運動量が核子幅への感度を低下させる一方、横運動量揺らぎや三角流などの観測量が核子位置の揺らぎに対してより鋭敏に反応することを示し、核子構造やクォーク・グルーンプラズマの性質を信頼性高く抽出する上でこの補正が不可欠であることを明らかにした。

Jian-fei Wang, Hao-jie Xu2026-02-27⚛️ nucl-ex

Towards a microscopic description of 12C+12C fusion at stellar energies

この論文は、多チャンネル共鳴群法を用いて12C+12C 融合反応を完全に微視的に記述し、実験データとの高い一致、24Mg 状態の混合構造の解明、および低エネルギー領域での融合抑制の微視的証拠の提示を通じて、恒星内部の深部燃焼温度における反応率の信頼性ある理論的外挿への第一歩を築いたことを報告しています。

P. Descouvemont2026-02-27⚛️ nucl-ex

Measurement of π0π^0-hadron correlations relative to the event plane in semicentral Pb-Pb collisions at sNN=5.02\sqrt{s_{\rm NN}} = 5.02 TeV

ALICE 実験におけるsNN=5.02\sqrt{s_{\rm NN}} = 5.02 TeV の半中心 Pb-Pb 衝突でのπ0\pi^0-ハドロン相関の測定結果は、JEWEL モデルの予測と一致し、イベント平面に対する有意な依存性は見られなかったが、これは経路長依存性を超えた追加のエネルギー損失メカニズムの存在を示唆する可能性がある。

ALICE Collaboration2026-02-27⚛️ nucl-ex

Deuteron coalescence probability in jets in p-Pb collisions at sNN=5.02\sqrt{s_{\rm NN}} = 5.02 TeV

本論文は、5.02 TeV の p-Pb 衝突におけるジェット内およびジェット外の領域で反陽子を含む (反) 重陽子の横運動量分布を初めて測定し、ジェット内での重陽子合体パラメータの増大が PYTHIA 8.314 モデルによって定性的に再現されることを報告したものである。

ALICE Collaboration2026-02-27⚛️ nucl-ex

Measurement of the charged-particle-jet transverse-momentum fraction carried by prompt and non-prompt J/ψψ mesons in pp collisions at s=13\sqrt{s}=13 TeV

ALICE 実験により、13 TeV の陽子 - 陽子衝突において、チャージド粒子ジェット内の J/ψ\psi メソン(直接生成と非直接生成)が持つ横運動量分率 (zchz^{\rm ch}) が測定され、PYTHIA 8 シミュレーションは低 zchz^{\rm ch} 領域では実験結果をよく再現するものの、zchz^{\rm ch} が 1 に近づく高値領域では孤立した J/ψ\psi の過大評価を示すことが明らかになった。

ALICE Collaboration2026-02-27⚛️ nucl-ex

Limits on the chiral magnetic effect from the event shape engineering and participant-spectator correlation techniques in Pb-Pb collisions at sNN=5.02\sqrt{s_{\rm NN}} = 5.02 TeV

ALICE 実験による 5.02 TeV の Pb-Pb 衝突データを用いたイベント・シェイプ・エンジニアリングと参加者・スペクテーター相関の 2 つの手法による解析結果は、いずれも測定誤差の範囲内でキラル磁気効果の存在を示唆する信号が観測されなかったことを示しています。

ALICE Collaboration2026-02-27⚛️ nucl-ex

Understanding the impact of nuclear effects on proton decay searches with the GiBUU model

GiBUU モデルを用いた研究により、次世代水チェレンコフ検出器における陽子崩壊探索において、中間子の最終状態相互作用よりも核内のフェルミ運動量分布の選択が大気ニュートリノ背景事象率の見積もりに決定的な影響を与えることが示されました。

Qiyu Yan, Akira Takenaka, Kai Gallmeister, Xianguo Lu, Ulrich Mosel, Yangheng Zheng2026-02-27⚛️ nucl-ex

Universal and non-universal finite-volume effects in the vicinity of chiral phase transition in (2+1)-flavor QCD

この論文では、2 質量ゼロクォークを含む QCD におけるカイラル相転移の秩序パラメータについて、HISQ 格子 QCD 計算データを用いた有限サイズスケーリング解析を行い、無限体积极限のデータが物理的なクォーク質量比においても期待される O(2) スケーリングとよく一致することを確認し、有限体積効果の温度およびクォーク質量依存性を詳細に定量化することで、無限体积极限の推定値の信頼性向上とカイラル相転移温度のより精密な決定に貢献することを示しています。

Sabarnya Mitra, Jishnu Goswami, Frithjof Karsch2026-02-27⚛️ hep-lat