「Nucl-Ex」は、原子核そのものの構造や性質、そして高エネルギーの衝突実験によって生まれる物質の振る舞いを解明する実験物理学の分野です。ここでは、素粒子の集まりがどのようにして宇宙の基礎を形作っているのか、あるいは極限状態でのみ現れる物質の新たな姿について、最先端の知見が日々積み重ねられています。

Gist.Science では、arXiv に投稿されるこの分野の全ての新しいプレプリントを網羅的に収集・処理しています。専門用語に埋もれがちな複雑な研究成果を、誰でも理解できる平易な解説と、技術的な詳細を網羅した要約の両面で提供し、科学の最前線へのアクセスを民主化します。

以下に、この分野から直近で arXiv に公開された論文の一覧を掲載します。

The 8^{8}Be nucleus and the Hoyle state in dissociation of relativistic nuclei

JINR の BECQUEREL 実験において、核エマルションを用いた相対論的原子核の解離過程を解析することで、8^8Be やホイル状態など多様な核クラスターの不安定状態を同定し、自動顕微鏡技術との組み合わせにより核クラスター物理学および核天体物理学の新たな展開が可能であることを示しました。

D. A. Artemenkov, A. A. Zaitsev, P. I. Zarubin2026-03-03⚛️ nucl-ex

Observation of the jet diffusion wake using dijets in heavy ion collisions

CMS 実験による 5.02 TeV の鉛 - 鉛および陽子 - 陽子衝突データを用いたダイジェット - ハドロン相関の解析により、ジェットがクォーク - グループプラズマ中を通過する際に生じる「拡散のwake(粒子枯渇領域)」が 5 シグマ以上の統計的有意性で初めて観測され、その性質が理論モデルと比較されて解明されました。

CMS Collaboration2026-03-03⚛️ nucl-ex

An EFT approach to Color decoherence in jet quenching

本論文は、有効場理論(EFT)を用いて、核物質中でのジェット生成における干渉に起因するカラー・デコヒーレンスを記述する因子化公式を導出し、LPM 効果とカラー・デコヒーレンスが単一の無次元パラメータによって統一的に制御されることを示すことで、重イオン衝突におけるジェット観測量の計算枠組みに干渉効果を取り込む方法を提案している。

Varun Vaidya2026-03-03⚛️ nucl-th

First measurement of ϕϕ meson production in 30 GeV proton-nucleus reactions via di-electron decay at J-PARC

J-PARC における 30 GeV 陽子 - 原子核反応の E16 実験のコミッショニングランにおいて、電子対崩壊チャネルを介したϕ\phi中間子の生成を初めて測定し、炭素および銅ターゲットでの生成断面積と質量数依存性を報告しました。

PARC E16 collaboration, Satomi Nakasuga, Yuhei Morino, Kazuya Aoki, Yoki Aramaki, Daichi Arimizu, Sakiko Ashikaga, Wen-Chen Chang, Ren Ejima, Hideto En'yo, Dairon Rodriguez Garces, Johann M. Heuser, R (…)2026-03-03⚛️ nucl-ex

Angular momentum conservation and pion production in intermediate-energy heavy-ion collisions

中間エネルギー重イオン衝突における厳密な角運動量保存則の導入は、Δ\Delta共鳴およびパイオンの吸収を抑制し、パイオン生成を大幅に増大させるとともに荷電パイオン生成比を減少させるため、高密度における核対称エネルギーの抽出に不可欠な輸送シミュレーションの精度向上に寄与する。

Hao-Nan Liu, Rong-Jun Liu, Jun Xu2026-03-03⚛️ nucl-th

Probing a Fifth Force in Muonic Atoms through Lamb Shifts and Hyperfine Structure

ATOMKI 異常に動機づけられ、ガウス展開法を用いた計算により、X17 粒子のベクトルおよび擬スカラー交換がミューオン原子のラムシフトと超微細構造に及ぼす影響を Z≦15 の安定核まで系統的に検討し、ベクトル・擬スカラー仮説間の相補性や、ミューオン水素・ヘリウム・ケイ素・リンなどの原子が将来の実験において最も有望なプローブとなることを明らかにしました。

Xiaoxuan Lin, Qian Wu, Wei Kou, Xurong Chen2026-03-03⚛️ nucl-ex