「Nucl-Ex」は、原子核そのものの構造や性質、そして高エネルギーの衝突実験によって生まれる物質の振る舞いを解明する実験物理学の分野です。ここでは、素粒子の集まりがどのようにして宇宙の基礎を形作っているのか、あるいは極限状態でのみ現れる物質の新たな姿について、最先端の知見が日々積み重ねられています。

Gist.Science では、arXiv に投稿されるこの分野の全ての新しいプレプリントを網羅的に収集・処理しています。専門用語に埋もれがちな複雑な研究成果を、誰でも理解できる平易な解説と、技術的な詳細を網羅した要約の両面で提供し、科学の最前線へのアクセスを民主化します。

以下に、この分野から直近で arXiv に公開された論文の一覧を掲載します。

Forward hadron production in pp collisions at LHC energies from an event generator based on the color glass condensate framework

本研究は、MC-CGC イベント生成器を用いて、LHCb の前方ハドロン生成データが元の MV モデルよりも HERA で制約された初期条件(MVγ^\gammaおよび MVe^e)を支持し、かつkTk_T因子化が DHJ 因子化に比べて中間ラピディティスペクトルの記述において優れていることを示すとともに、将来の ALICE FoCal 測定に対する予測も提供することを目的としている。

Hirotsugu Fujii, Tetsufumi Hirano, Kazunori Itakura, Yasushi Nara, Shujun Zhao2026-05-18⚛️ nucl-ex

Inclusive charm and bottom quark pair production cross sections at hadron colliders at next-to-next-to-leading-order accuracy

本論文は、MaunaKea コードを用いた次々次世代(NNLO)計算により、広範な衝突エネルギー領域における包括的なチャームクォーク対およびボトムクォーク対の生成断面積を包括的に研究し、これらの改良された予測が実験データとの一致を著しく向上させ、グルーオン密度およびボトムクォークの極質量に対する貴重な制約を提供することを示す。

David d'Enterria, Felix Hekhorn, Ilkka Helenius, Van Dung Le, Hannu Paukkunen2026-05-18⚛️ nucl-ex

Characterization of nuclear breakup as a function of hard-scattering kinematics using dijets measured by ATLAS in pp+Pb collisions

ATLAS 検出器による 8.16 TeV の p+Pb 衝突データを用いて、本研究は前方エネルギー堆積に基づく事象幾何学推定量が初期状態の硬散乱運動量に敏感であることを示し、特にプロトン側のパートンの Bjorken-x に強く依存することを明らかにし、その依存性はゼロ度カロリメータよりも前方カロリメータにおいて著しく顕著であることを示した。

ATLAS Collaboration2026-05-14⚛️ nucl-ex

Collective effects in O-O and Ne-Ne collisions at sNN\sqrt{s_{\mathrm{NN}}}=5.36 TeV from a hybrid approach

本研究では、LHC における今後の O-O 衝突および Ne-Ne 衝突における集団効果を予測するために、純粋なハドロンモデルおよびストリングモデルに加えてハイブリッドアプローチを採用し、小規模衝突系におけるクォーク・グルーオンプラズマ形成の開始点を、流体力学的進化と非流体力学的進化を比較することによって決定することを目的としている。

Lucas Constantin, Niklas Götz, Carl B. Rosenkvist, Hannah Elfner2026-05-14⚛️ nucl-th

First investigation of 96^{96}Zr samples enriched by the gas-centrifuge method for the use in rare-decay studies

本論文は、ガス遠心分離法で濃縮された96^{96}Zr試料の初回製造と、それらを用いた低背景調査を報告するものであり、これにより96^{96}Zrから96^{96}Moの01+0^+_1励起状態への二重ベータ崩壊の半減期について、T1/2>3.9×1019T_{1/2} > 3.9 \times 10^{19}年という新たな厳格な限界値が確立された。

D. Arefev, A. S. Barabash, M. De Jesus, S. Evseev, D. Filosofov, N. Gorshkov, V. Kazalov, D. Karaivanov, T. Khussainov, O. Kochetov, D. Kushnarev, N. A. Mirzayev, A. Lubashevskiy, D. Ponomarev, A. Rak (…)2026-05-14⚛️ nucl-ex

Exclusive dimuon production and coherent charmonium photoproduction at forward rapidity in ultra-peripheral Pb$-$Pb collisions at sNN=5.36\mathbf{\sqrt{s_{\rm NN}}=5.36} TeV

sNN=5.36\sqrt{s_{\rm NN}}=5.36 TeV における超周辺 Pb–Pb 衝突からの 2023 年 ALICE データを用いて、本論文はコヒーレント J/ψ\psiおよびψ\psi(2S) 光生成と排他的双ミューオン生成の前方 rapidity 測定を提示し、クォロニウム生成における顕著な核シャドーイング効果を明らかにするとともに、核半径付近での光子フラックスモデル化に対する双ミューオン測定の感度を浮き彫りにしている。

ALICE Collaboration2026-05-14⚛️ nucl-ex

Dark photon searches in the photon channel

本論文は、π0\pi^0 崩壊からの光子生成におけるスペクトル形状の差異を用いたモデル非依存のダークフォトン探索戦略を提案し、GEANT4 シミュレーションを通じて、主に不可視崩壊を起こすダークフォトンに対して、タングステン箔を用いた 1 GeV 陽子ビームが未探索のパラメータ領域を検出可能であることを示す。

D. Aristizabal Sierra, A. Betancur, K. Pohl, J. Velez2026-05-14⚛️ nucl-ex

Glauber quark and gluon contributions to quark energy loss at next-to-leading order and next-to-leading twist

本論文は、重クォーク質量効果、グラウバークォーク・グルーオン相互作用、およびコヒーレンス効果を組み込み、次々位および次次リードオーダーにおいて核環境を通過する高エネルギー仮想クォークに対するすべての可能な媒質誘起単一散乱放射カーネルを計算し、完全な位相因子および勾配展開を備えた4つの異なる衝突散乱カーネルを導出する。

Amit Kumar, Gojko Vujanovic2026-05-13⚛️ nucl-ex

Neutron star crust and outer core equation of state from chiral effective field theory with quantified uncertainties

本論文は、非対称核物質の状態方程式におけるカイラル有効場理論の不確実性を定量化するために二次元ガウス過程を用いたベイズ的枠組みを採用し、これにより飽和密度の2倍までの中性子星の内部地殻および外核に対する一貫したモデルを構築する。

H. Göttling, L. Hoff, K. Hebeler, A. Schwenk2026-05-13⚛️ nucl-ex

Performance of the Particle-Identification Silicon-Telescope Array Coupled with the VAMOS++ Magnetic Spectrometer

本論文は、逆運動学における多核子移動反応によって誘起される核分裂過程の研究に対して、高分解能の粒子同定および励起エネルギー再構成(800 keV FWHM)を達成する能力を実証する、VAMOS++ 磁気スペクトロメータと結合された新しい PISTA シリコン望遠鏡アレイの性能評価を提示する。

L. Bégué-Guillou, A. Lemasson, P. Morfouace, D. Ramos, J. Taieb, J. D. Frankland, M. Rejmund, G. Fremont, P. Gangnant, A. Cobo-Zarzuelo, N. Kumar, T. Efremov, A. Chatillon, E. Clément, G. De France, A (…)2026-05-13⚛️ nucl-ex