物質の性質を温度や圧力などの巨視的な現象と、原子や分子の微視的な振る舞いを結びつけるのが統計力学です。この分野では、無数の粒子が織りなす複雑な集団行動から、熱や圧力といった日常の物理法則がどのように導き出されるかを解明します。

Gist.Science では、arXiv に投稿された統計力学関連の最新プレプリントをすべて対象に、専門家が執筆した平易な解説と詳細な技術的サマリーを提供しています。複雑な数式に囲まれた研究を、誰もが理解できる形に翻訳することで、科学の最前線を広く共有することを目指しています。

以下に、統計力学の分野から選り抜かれた最新の論文リストを掲載します。

On some mathematical problems for open quantum systems with varying particle number

本論文は、非相対論的量子統計力学の枠組みにおいて、粒子数が変動する開放量子系に対する有効ハミルトニアンの導出、その一意性の証明、およびヒルベルト空間がフォック空間と同型であることを示すことで、統計物理学における標準的なグランドカノニカル形式に数学的な厳密な根拠を与えるものである。

Benedikt M. Reible, Luigi Delle Site2026-02-26🔢 math-ph

Stochasticity of fatigue failure times in sheared glasses

本論文は、原子論的シミュレーションおよび有限要素法に基づく弾塑性モデルを用いて、繰り返しせん断変形を受けるガラスの疲労破壊時間の分布を調査し、そのばらつきが試料の無秩序さに起因するだけでなく、破壊プロセス自体に内在する確率論的性質に由来することを明らかにした。

Swarnendu Maity, Pushkar Khandare, Himangsu Bhaumik, Peter Sollich, Srikanth Sastry2026-02-26🔬 cond-mat

On Negative Mass, Partition Function and Entropy

この論文は、負の質量の存在を扱う際、負の絶対温度を仮定すると分配関数が虚数となりエントロピーが複素数になるのに対し、絶対温度を正に保ち虚数速度を導入することで分配関数を正、エントロピーを実数に保つことができ、後者のアプローチの方が物理的に妥当な結果をもたらす可能性があると論じています。

S. D. Campos2026-02-25🔬 cond-mat

Two Splits, Three Ways: Advances in Double Splitting Quenches

本論文は、2 つの境界を超える BCFT のホログラフィック双対を計算する手法を提案し、1+1 次元 CFT が瞬間的に複数のセグメントに分割される際のエンタングルメントエントロピーの時間発展(特に 2 つの分割の場合)を解析して既存の結果と一致することを実証し、より多くの分割や有限温度系への拡張の基盤を築いたものである。

Joseph Dominicus Lap, Berndt Müller, Andreas Schäfer, Clemens Seidl2026-02-25⚛️ hep-th

Boundary-induced classical Generalized Gibbs Ensemble with angular momentum

本論文は、円形境界に閉じ込められた古典的硬球系が、角運動量の保存によりギブズ集団ではなく一般化ギブズ集団(GGE)へ収束し、エルゴード性の破れや境界近傍の凝縮、ボーア・ファン・レーウェン定理の違反といった特異な現象を引き起こすことを、解析と数値シミュレーションを通じて明らかにしたものである。

Francesco Caravelli, Marc D. Vuffray2026-02-25🔬 cond-mat

Control of spatiotemporal chaos by stochastic resetting

本論文は、確率的な初期状態へのリセットを導入することで、離散非線形写像やその格子拡張においてリャプノフ指数とバタフライ速度が同時にゼロとなり、情報が拡散しない臨界リセット率でダイナミカルな相転移が生じ、時空間カオスが制御可能であることを理論的に示し数値シミュレーションで検証したものである。

Camille Aron, Manas Kulkarni2026-02-25🌀 nlin

Understanding entropy production via a thermal zero-player game

この論文は、格子ガスやイジングモデル、離散ゲームの特性を併せ持つ「熱的ゼロプレイヤー・エントロピーゲーム(ICEg)」を提案し、そのエントロピー生成率が温度や格子サイズに依存しない普遍的な上限を持つことを示すことで、駆動された非平衡多体系における熱力学の基礎を解明する新たな枠組みを提示しています。

M. Süzen2026-02-25🔬 cond-mat

Improving the efficiency of quantum annealing with controlled diagonal catalysts

本論文は、量子アニーリングの最小エネルギーギャップが小さい場合に、ハミルトニアンに制御された対角項を導入して非断熱遷移を利用することで、従来の手法に比べて時間解決の指数スケーリング係数を約 2 倍改善する手法を提案し、そのパラメータの転移可能性を検証したものである。

Tomohiro Hattori, Shu Tanaka2026-02-25⚛️ quant-ph